ラブソングは舞台の上で
制服に着替えながらパリの土産話を聞かせてもらった。
セレブチックな年越しに憧れるものの、中学レベルの英語すらまともに話せない私は、海外へ飛び出す勇気がない。
外国人とも友達になりたいと英会話教室に通い、そこの講師やイングリッシュパブの常連客と深い関係になった経歴を持つ詩帆さんの行動力やバイタリティーには、いつも舌を巻く。
「明日香は今年の冬休み、どうだったの?」
「まあ、何ていうか……色々刺激的でした」
詩帆さんは「刺激的」という言葉に目を輝かせた。
声には出していないが「詳しく聞かせて」と大音量で聞こえてくる。
しまった、言葉のチョイスを誤った。
「別に詩帆さんが期待してるようなことはないですよ。ただ、劇団の人と忘年会やったり新年会やったりして、勉強になったとか、私も頑張ろうって思えたとか、そういう意味です」
詩帆さんは話の続きを待つ姿勢だ。
この程度では満足してくれない。
「ふふん、騙されないわよ。その中で色々あったんでしょ?」
どうしてこういう勘ばかり冴えるのか。
私は素敵な鏡のお返し代わりに、一ネタ披露することにした。
「一番刺激的だったのは、女子高生にヒロイン役奪ってやる!って宣戦布告されたことですかね」
「なにそれ、青春っぽい! それで、何て答えたの?」
「何も。私大人なのに、結構本気でビビっちゃって、逃げました」
詩帆さんはヘタレーと言いながらおかしそうに笑ってくれた。
それで私の役目は終わったと思いきや。
「他には?」
「えっ?」
「色々って言ったじゃない。それだけじゃないんでしょ?」
だから、どうしてこういう勘ばかり冴えるのか。
「それはまた、別の機会に……」