ラブソングは舞台の上で



12月24日。

定時で仕事を切り上げ、着替え、念入りにメイク直しをする。

いつもはダークな色のシックな装いが多いのだが、あいつがデートだと言ったから、今日は久しぶりにオフホワイトのニットワンピースを引っ張り出してみた。

……いや、正直に言おう。

ニットワンピは晴海と約束を交わしたその翌日に引っ張り出し、念入りに毛玉を取り、いい香りのするデリケート衣類専用の洗剤と柔軟剤で洗った。

合わせるアクセやらコートやらタイツやらブーツやらも、あれでもないこれでもないと慎重に選んだ。

久しぶりの、デートらしいデート。

完全に舞い上がっている。

私が自分の顔と戦っている様子を、詩帆さんがニヤニヤしながら眺めていた。

「……なんですか」

「別にぃ。お相手は誰かしらと思って」

あの時私を持ち帰った男ですよ。

わかっているくせに、あえて言わせたいと顔に書いてある。

「誰だっていいじゃないですか」

あの日の合コンは、今日を一緒に過ごす人を見つけるためのものだった。

期待されていた関係ではないが、私は一応、その目標を達成できたということになる。

気を取り直して、もう一度鏡を見る。

髪のウェーブがイマイチな気がする。

ロッカーに常備しているヘアムースを手に取り乾燥した髪に揉み込むと、ダメージヘアに輝きとうねりがよみがえる。

この様子を、詩帆さんは満足そうに眺めていた。


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