キスまでの距離
prologue
「先輩、落ち着かないとかいうなら、職員室帰ってください。」

後輩の町田にたしなめられた。

「やだ。」

町田はやれやれという顔をしながら、紙コップに注いだコーヒーを俺の前においた。

「何があったかとか、聞きませんけど。」

そういうと、窓の外を見ながら、帰り支度を始めた。

分かっている。家庭がある町田は、できるだけ残業せず、早く帰りたいってことを。駐車場まで毎日早歩きで行っているぐらい、奥さんの百合ちゃんや娘の桃ちゃんを大事にしている。

「それ、飲み終わったら、帰ってください。」
「はい。」

淹れてくれたコーヒーを一口飲んで、またふと考えてしまった。でも、感情が暴走してしまいそうで、もう少し職員室には戻りたくない気持ちだった。
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