キスまでの距離
終わりは始まり
真新しい部屋の壁に、背筋がすっと伸びるような気持ちになった。荷物をあらかた片付け終わり、窓の外を見ると、あと少しで夜がやってくる時間になっていた。

冷蔵庫を開けて、とりあえず買って入れておいたお茶のペットボトルを出し、一口飲んだ。

今日からは一人の生活だ。

あこがれよりも、不安が先立つ。たいして何もできない自分が、一人でやっていけるのか、仕事と家事を両立できるのか、あれやこれやと気にかかる。

ほとんどの人に、大丈夫と言ってもらったから、なんとかなる、と自分に言い聞かせた。けれども、手伝ってくれた家族が帰った部屋で、ふと不安がよぎった。
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