キスまでの距離
ドアを開ける前に深呼吸をした。

息を吐いて、ドアを開けて、空を見上げた。雲はあるけど、そこそこの天気。少し肌寒いけど、ジャケット着てるから、ちょうどいいかな。

車を走らせて、何事もなく、職場の駐車場に到着した。すぐ後ろを走っていた車も、入ってきて2台あけた隣に停めた。

緑の小型車。

「おはようございまーす。」

カバンを抱えて降りようとしたら、声をかけられた。

「お、おはようございます。」

20代…後半ぐらいだろうか。短くて軽い癖毛っぽい髪に、黒いフレームの眼鏡の男性。なんだかちょっと緊張して、軽くどもってしまった。

それを見て、ふにゃっと笑っていた。

「はじめましてのほうが、よかったかな?」
「あ、そうですね。はじめまして。
今日からお世話になります、司書教諭の…」

名乗ろうとしたとき、あっ、という顔をして、その人は私を見た。
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