キスまでの距離
静かな熱
その譜面を見たとき、誰もが同じことを思っただろう。それを一番強く思ったであろう、部長の馬場が口火を切った。

「ねぇ、先生、これ、本気で言ってます?」

ああ、と、至って普通に金沢先生は返した。

「昨日やっと、踏ん切りがついた。一度はやってみる価値があるから。」

カンタベリーコラール。

曲名は知っているけれども、一度も聞いたことのない曲だった。譜ヅラは簡単だったが、さーっと吹いてみて、さっぱりイメージは沸かない。

「マジ、どうかしてるわ…」

馬場が楽器を抱えて、ぶーたれていた。

「何が?」
「これさ…いや、これに限らずだけどさ、ホルン殺す気かって気がする。」

まあ、そういうパートだよな…
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