キスまでの距離
翌朝。

朝練からロングトーン中心に、音程の安定を図る練習にシフトすることにした。

「この曲さ。」

楽器を片付けながら、千佳がポツリとつぶやいた。

「静かな熱を感じるね。」

ハッとした。静かな熱、か…

「地味だけど、やりがいあるよね。」
「千佳が部長だったらよかったのにな。」

はあ?と言ったあと、軽く頭をはたかれた。

「ハルヒちゃんみたいに、しっかりしてないか無理!」

遅刻するよ!と追いたてられて、音楽室を出た。

静かな熱、か…

それはいつ、気付かれるんだろうか。

俺はずっと、持っているんだけどな。
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