キスまでの距離

side B

幸せという言葉に、いろいろなことがよぎった。自分は普段あまり口にしない言葉を、彼女はさらっと言っていた。

幸せにするんだって、気を張って考え過ぎていたのかもしれない。だから、逆に周りが見えない、一番幸せにしたかった相手が見えてなかったのかもしれない。

「ありがとうな、町田。」
「いや、いつもじゃないですか。」
「いや、なんというか、本当は家族の時間もあるから、さ。」

帰宅前に寄ってもらったコンビニの駐車場で、きちんと言葉にしなければと思った。彼女の「幸せだな」という言葉で、伝えることの大切さを、どこかおざなりにしていたように思った。

まだまだ教えてフォローしなければならないことがたくさんあるのに、教えられることが多いのは、なぜなんだろう。

< 41 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop