キスまでの距離
冷たい女
タクミと別れたのは、お互いの意見の一致だった。

たくさん泣いた。たくさん考えた。たくさん話した。そしてその結論が別離であった。

遠距離というほど遠くないし、つながる方法ならいくらでもある。でも、仕事が始まれば、お互いを思いやることそのものが、心の足かせになるかもしれない。それが、私とタクミの結論だ。

なのに、今日はふと、タクミのことを思い出した。あの時の、金沢先生の少し寂しそうな目が、タクミと似ていたから、かもしれない。

いや、タマ…かな?

ふと見上げた空は雲がかかり、星はひとつも見えなかった。むなしいため息だけが、空の向こうに吸い込まれた。
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