2人のユウト




 エアコンの効いた車内は、気持ち良かった。


 何故か車内に小さな冷蔵庫が備え付けられており、新葉さんのお言葉に甘えて、お茶を頂いた。


 冷たいお茶が喉を通り、疲れを癒してくれた。



「どこへ行かれますか?」


「空港なんですけど」



「空港?・・・もしかして、優斗様の?」



「はい。新葉さん、何か知ってますか?」



「えぇ、美夏様の執事の椎葉とは知り合いでしてね。
彼から少々話を聞きました。

優斗様のご両親は美夏様と優斗様を別れさせてしまったことを、ずっと後悔しておられたようです。
そしてこの間、幸菜様によってお2人は再会しました。
その時、美夏様はご両親に伝えたようです。
優斗様と一緒に住みたいんだ、と。

ご両親は悩んだそうですが、何しろ美夏様が大好きなお方ですからね。
美夏様の願いを叶えようとしたようです。

しかし1度縁を切った優斗様を再び舞原に受け入れるとなると世間の目が変わってしまわれます。
舞原財閥の子どもは美夏様、ただお1人と世間に発表されていますからね。
今更お兄様がいた、と公開すれば、舞原の信頼が失われてしまう可能性がございますから。

そのため明人様は、学生時代にアメリカへ留学した際お世話になった研究所へ優斗様を研究員として雇わせようとお考えになったのでございます。
優斗様は今でも昔と変わらないIQの持ち主。
話を伺った研究所の所長様は、喜んで優斗様を受け入れることにしたのでございます」



「断ること・・・出来ないのですか?」



「それは勿論可能でございます。
何も強制ではありませんから。

しかし、優斗様ご本人が行くと決めてしまっておりますから。
優斗様の意思が変わらないと、断れませんね」



「どうして優斗くんは、行くって決めたの?」





< 350 / 368 >

この作品をシェア

pagetop