ぽんぽんぼん



「授業始まる前にちょっとだけ匂い嗅いでも良い?」



そう尋ねた瞬間、蔑んだ目を向けられる。



「変態」


「変態じゃないよ。通常です!」


「アホ」


「そりゃ、梶木君よりはアホですが」



梶木君は学年10位の中にはいつも入っている勉強の出来る人。


それに対して私は良くも悪くもなく、丁度真ん中位をゆらゆらとしている普通なやつだ。



だから梶木君よりはアホですが、普通です!



ぷうっと頬を膨らませる私に意地悪な笑みを向ける梶木君は、明らかに私に匂いを嗅がれるのが嫌いなんだろう。


チラッと教室にある時計に目をやる梶木君。


その後にさも待ってましたと、ニヤッと片方の口角を上げて口を開く。



「あっ、授業始まるよ」


「えっ!まだ嗅いでない!」


「残念でした」



淡々とそう言う梶木君はやっぱり酷い。


梶木君の甘い匂いを嗅ぎそこねてしまった。



「次の休み時間に頂きに来ます!では!」



ピシッと背筋を伸ばし敬礼のポーズをとりながらそう言うと、梶木君に背を向け自分の席へと戻ろうと足早に歩を進める。


その後ろから聞こえて来る「はいはい。もう来ないで下さい」という梶木君の溜め息混じりの言葉。



くっそー!



どうやら、梶木君の言葉は私の闘士に火を着けたみたいだ。



絶対に、絶対に次の休み時間に梶木君の匂いを嗅いでやる!



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