ぽんぽんぼん
授業終了のチャイムが鳴り響くと同時に席を立つ。
向かうは勿論、梶木君の席だ。
だらだらと机に教科書をしまっている様子の梶木君はまだ動く気配がない。
さて、行きますか。
待っててよ、梶木君!
目標を梶木君へと合わす。
と、同時に席から立とうとした梶木君へと全速力で走って突進して行った。
バンッ!!
その音と共に、彼の胸にぶち当たった私の顔。
梶木君はビクッと肩を揺らしたものの、私のぶつかった衝撃なんかは屁のかっぱらしく、ものともしない。
逆に私はといえば、実は鼻の骨が折れるんじゃないかって思う程痛い。痛いのだけれども、鼻腔に間近で届くこの甘い香りがその痛さも忘れさせてしまうのだ。
走ったままの勢いでタックルまがいのぶつかりを見せ、彼の胸に鼻を当て大きく息を吸う。
きっと梶木君はまた蔑んだ目を私に向けているのだろう。
私だっていきなりぶつかって来た人に匂いを嗅がれたら嫌だ。
でも、でも、悪いかな?と思っていても、その甘い誘惑にはどうしても勝てないんだ。
吸うと共に梶木君から香る甘い香りが私を満たす。それと同時に顔を上げた。
「頂きました!」
「ほんと、うっざいね。森山さん」
満足顔の私とは対照的に顔を歪める梶木君。
そんな表情を向けられているのに、にこっと微笑む私は彼のそういう表情に慣れてしまったらしい。