私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「ここでいいんだよね?」

 タウン情報部のスペースに行くと机が5つあり、4つは向かい合わせでつけられていて、1つは上座としての位置にある。

 机の上はファイルが乱雑に重ねてあり、パソコンもあるけれど使われている様子もなく、本当にここがタウン情報部なのかと疑った。

「スペース、小さっ」

 段ボールを抱えながら、思わず本音が漏れた。

 だってファッションやスポーツを扱う部署の人数はそこそこいるのでスペースは大きいけれど、タウン情報を扱う部署のスペースはとても小さく感じたんだもの。

 それよりもタウン情報部のメンバーの姿が誰一人もないんだけど…、とっくに就業時間を過ぎているというのに来る気配すら感じられない。

「あの~、すいません。タウン情報部の姫川編集長って、まだ出勤してこないんですか?」
「ああ―…」

 私は段ボールを抱えたままタウン情報部の隣のスペースを使っているのスポーツ部の人に声をかけると、スポーツ部の人はタウン情報部のスペースを見て苦笑いをした。

「姫川編集長っていつも昼近くに来るから、まだ当分来ないね」
「はっ?」

 スポーツ部の人はあっけらかんに言うけど、昼過ぎに来るってどういうこと?

「タウン情報部に何か用なの?」
「私、タウン情報部に異動が決まったんで荷物まとめて来たんですけど、メンバーの人が誰もいないなぁと思って」
「タウン情報部に異動?!」
「えー?!タウン情報部に人が増えるのって、かなり久しぶりじゃない?」

 私がタウン情報部に異動したという言葉にスポーツ部の人たちがざわめきだすんだけど、何?何なの?タウン情報部ってざわめきだす程の部署なの?

「ま~、来るのは昼過ぎなのが確実だから荷物置いて待ってたら?」
「はい…」

 私は段ボールを机の上に置いて、とりあえず自分の荷物を取り出しながらメンバーが来るのを待つことにした。
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