私が恋した男〜海男と都会男~
『最初は物珍しそうにするけど、結局は寂しいとか言って離れていくんだ』

 またあの言葉が浮かんで、顔を横に振ってもモヤモヤする。

「麻衣ちゃん、どうかしたかい?」
「海斗さんはこのまま漁師を続けて行くんですか?」
「うーん、そうだねぇ…。親父さんと同じ漁師にならなくてもいいんじゃないかってわしらも言っていたんだが、『親父が漁師になっていなきゃ母さんに出会えていなかったし、俺たち兄弟もいなかったから。それにこの街のみんなは温かいから好きだから、この街にずっと暮らして生きたいから漁師になる』って言っていたなぁ」

 ヨシハラのお爺さんは嬉しそうに話すのを見て、海斗さんにとってこの街は自分の支えになっているくらい大切な場所で、そして漁師という職業に信念と誇りを持っているんだ。

 でも恋愛に関しては拒絶反応をしていて、もがいているように見えた。

「お話を聞かせて下さってありがとうございます」
「いいよ。わしらは麻衣ちゃんがこの街を好きになってくれたら嬉しいよ」
「好きです…、大好きです」

 海斗さんが乗っている漁船を見ながら、正直な気持ちを口にする。

 ああ…、徐々に自分が書きたいと思う記事や写真の方向性が見えてきた。

 ヨシハラのお爺さんと別れ、撮影やインタビューを繰り返していたら、すっかり夜になっちゃったなぁ。

 街灯のランプに灯りが点くとまた違う雰囲気となって、海をみると今日は月が出ていないせいで海と砂浜の境がなく、漆黒だけだった。

「月が出ていないだけで、こんなにも違うんだ…」

 海斗さんと見た海はあんなに綺麗だったのになぁ。

 とぼとぼと通りを歩いてると海の家があるエリアに来て、海の家から音楽が聴こえる。

「ねぇ、おねーさんは1人?」

 ポンッと肩を叩かれたので振り向くと、茶髪でいかにもサーフィンしてますっていう男性が数人立っていた。

「仕事中なんで」

 興味ないように歩くとナンパ軍団も後をついてくるし、相手にしないように無視だ!無視!と歩く速度を早めると、ナンパ軍団の1人が私の腕を掴んで、他の人は行く手を阻むかのように私を取りんで

「止めて、離してよ!」
「大人しく俺たちと楽しもうぜ」

 嫌だ…、助けて!!と私はギュッと目を瞑って、ここにいない人の名前を心の中で叫んだ。
 
『海斗さん!!』
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