私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
 通いなれた通りを歩いていると、四つ葉出版社のビルが見えてきた。

 この四つ葉出版社のビルは大手出版社のビルよりも規模は小さくて3階建てとなっており、1階はエントランス、2階は私が在籍しているファッション雑誌『Clover(クローバー)』の部署が半分を使用し、残りの半分はスポーツとタウン情報がそれぞれ使用し、そして3階が会議室と社長室となっている。

 私はエントランスに入り、エレベーターを使わずに階段で2階へと上がる。

 社長が経費削減の一環としてエレベーターの使用制限を告知し、社内にいるみんなも渋々で階段を利用していたけれど、元々四つ葉出版社のビルは小さいので今は慣れた。

 私はカバンから社員証として使うICカードを取り出してドアのセキュリティー部分にICカードをかざすと、小さな電子音が鳴るとドアのロックが開錠され、ドアノブを回して開けた。

「おはようございます」
「おー、おはよう」
「おはよう」

 私がドアを開けたと同時に挨拶をすると、既に出社している社員たちが次々と声をかける。

 私は自分の席へ向かうと椅子に座り、バックを足元に置いてパソコンを起動させた。

 パソコンの画面の背景は女っ気もない青一色で、そこには様々なフォルダやファイルのアイコンが点在しているけど、この方がファイルが探しやすいというのもある。

 私の仕事の始まりはメールチェックからで、その後はスケジュールソフトを立ち上げて一日の流れを把握する流れだ。

 今日は次に発行する雑誌の写真を選んだり、それに関する記事を書かなければならない。

 四つ葉出版社の規模が小さいのはビルだけじゃなく、社員も他社と比べて少ないので、外部のライターへ記事の発注をせずに自分たちで担当するのだ。
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