私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「おやまぁ、悪気はないから許してね。海に落ちたし無理に動くと危ないから、今日はこのまま泊まっていきなさい」
「そんな!助けていただいたのに、これ以上ご迷惑おかけするわけにはいきません」

 海に落ちたのを助けてもらったのは嬉しいけど、初対面で泊まるのは流石にマズイよ。

「いいの、いいの。海斗と2人しか居ないし、使ってない部屋は沢山あるから。荷物も濡れたままだから、ここで乾かすといいわ」

 お婆さんが指を指した方を見ると、私の鞄がびしょ濡れになっていて、あぁ、せっかく用意した服や荷物がもう使えないし、今から泊まるところを探すとなると見つからないだろうし、これはご厚意に甘えるしかないよね。

「お言葉に甘えて、お世話になります」
「いいのよ。私はヒデ子だけれど、貴女の名前は?」
「九条麻衣です。麻に衣で麻衣と言います」
「麻衣ちゃんね。海斗ー!!こっちに来なさい」
「何だよ、婆ちゃん」

 すると海斗さんがまた和室に戻ってきて、ヒデコ婆ちゃんが私の肩をポンっと触る。

「今日は麻衣ちゃんが泊まるから、あんたが美味しいご飯作ってあげてね」
「突然ですが、お世話になります」
「……分かった。あんた、ご飯作るの手伝って」
「は、はい!手伝います」

 ひょんなことからお世話になることになっちゃたけれど、助けてもらったのでお手伝いを頑張らなくちゃ。
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