私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
 私は出来た料理が盛り付けられている食器を和室に運び、3人で和室に集まって手を合わせて料理を食べ始める。

「いただきます」

 机の上には海斗さんが作った料理がところ狭しに置かれていて、獲れたての魚は弾力もあって噛むたびに口の中に海の味が広がり、大きい浅蜊のお味噌汁は一口飲んだけで体全体を温かくしてくれる。

 煮魚も見た目はしょっぱそうに見えても、口に含めば身がふっくらしていて味もしょっぱくはないし、こんなにも美味しい料理を食べたのは初めてだから、箸を置くことが出来ずに沢山食べていく。

「ご馳走さま」
「海斗さんがつくった料理、美味しかったです」

 海斗さんはお茶碗と使った取り皿を手にして立ち上がって台所へ行こうとするので、私はお箸を置いて海斗さんに声をかけた。

「……」

 海斗さんはピタッと立ち止まったけど何も言わずに立ち去っていき、うーん、あまりこちらから話しかけられるのは苦手な人なのかな?避けらてたら、ちょっと凹んじゃうなぁ。

「あの子はああいうぶっきらぼうなだけだから、気にしないで。今日はゆっくり休んでね」
「はい」

 ヒデ子婆ちゃんの笑顔は落ち込みそうな私を優しく包んでくれるから、私もにこりと微笑んだ。
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