私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
 私は食器を片づけてお皿を洗い、お風呂をいただいて、今は布団に入って今日のことを思い返した。

 宇ノ島近辺を歩いてみて路地裏では隠れスポット的なお店もあったし、今度は雑貨屋に入ってみようかな。

 でもせっかく用意したデジカメは海に落ちて壊れちゃったし、撮影した写真のデータは消えちゃったからもう使えないよね。

 特集を任されて張り切ってた分、一瞬にして無くなっちゃった………、ヤバイ、泣きそう。

 鼻の奥がツンっとなって涙が溢れそうになるから、流してたまるかと必死に堪える。

 こんなことで泣いたら社会人としてダメだから、歯を食いしばって掛布団で顔を隠すけど、まるで海に沈んだ気分でなかなか寝つけない。

「お水、飲もうかな」

 私はむくっと起き上がって寝間着の袖で目元を拭うと、和室の襖をそっと開けた。

「台所はこっちだよね」

 佐々原家は木造の平屋で某国民的アニメに出てくる大家族の家の間取りみたいで、道順を覚えておかないと迷子になりそうだし、廊下を歩くと足元の床がギシギシと音がして、もし台風がきたらこの家は大丈夫だろうかと心配しちゃう。

 うる覚えな記憶を頼りに台所へいくと灯りが点いていたので、誰かいるのかな?と思って台所に入ると、海斗さんがいた。

「あんた、どうした?」
「えっと、喉が渇いたのでお水を飲もうと思って……」
「ちょっとこっちについてきて」
「どこに行くんですか?」
「ついてくればいいから」
「ま、待ってください」

 私は先に行く海斗さんの後をついていくんだけど、何処に行こうとするんだろう?
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