私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「お忙しい中お時間を作ってくださり、ありがとうございます。わたくし四つ葉出版社タウン情報部に所属しています、九条麻衣と申します」
「九条さんだね。こちらこそ、宜しくお願いします」

 机を挟んで向かい合って座り、私は鞄から名刺を取り出して男性に名刺を渡すと、男性は目を細めながら微笑み、姫川編集長は咳払いをする。

「早速だが電話で話をした通り、発行する季刊の撮影スケジュールとインタビューのスケジュールで相談をしたい」
「海の家のオープンに合わせて建設を進めているから、作業の合間じゃないときついかな。早くて3日後なら大丈夫だけどね」

 3日後なら季刊の入稿作業に響かないと思うから大丈夫なはず…、手帳を開いて季刊の制作スケジュールを確認してけど、さっきの兄弟だと知った驚きが強くて集中が出来そうにない。

「おい、ちゃんとスケジュールを見てんのか?」
「えっ、あ、はい……」
「お前が書くんだから、しっかりしろよ」
「すいません」

 怒られちゃった…、気を引き締めていかなきゃと頬をペチペチ叩いて、気持ちを集中させる。

「俺は水瀬に連絡してくるから、ここで待ってろ」
「分かりました」
「水瀬か?撮影スケジュールのことだが―…」

 姫川編集長は少し離れた場所に移動してスマホで電話をかけ始め、電話が終わるまで時間があるし、きょろきょろと海の家の中を見渡してみて、少しでも記事に使えるものを残しておこうと鞄からスマホを取り出し、カメラ機能を起動させた。

「あの、記事の参考にしたいので海の家を撮影してもよろしいですか?」
「どうぞ」
「ありがとうございます」

 男性は快諾してくれたので、私はスマホで海の家の外から撮影をし始めた。
< 85 / 161 >

この作品をシェア

pagetop