私が恋した男(旧題：ナツコイ～海男と都会男～)
「みんな素敵な表情をしてる」

　スマホの画面には楽しそうに海の家を作っている人たちが映っていて、その表情を逃したくなくて撮影ボタンを押す。

　ファッション部にいた頃はプロのカメラマンがモデルを撮影をしていたけれど、タウン情報部では姫川編集長が撮影をしているから、私だってこの季刊をきっかけにもっと出来ることを増やしたいし、撮影の技術も習得したい。

　あそこで木材を運んで支柱を作る人を見つけ、邪魔しないように離れた場所に立ってスマホの画面を見ると、目の前に木材が迫ってきた。

　これってぶつかる？！

「危ない！！」
「きゃっ」

　するとグイッと腕を引っ張られ、ドサッと私は砂浜に倒れた。

　これがもし砂浜じゃなくてコンクリートだったら、頭を強打して悲惨な状態になっていたかもしれないけれど、倒れたのが砂で良かったかも。

「あんた、大丈夫か？」

　私は見上げると海斗さんが私に覆い被さっていて、海斗さんの背後には海のような青い空が見える。

「大丈夫です。また海斗さんに助けられちゃいました」
「あんたが無事なら、痛っ…」

　痛そうに歪んだ表情する海斗さんをよくみると、海斗さんの背中に木材が数本あって、もしかして怪我をしちゃったの？

「海斗さん、背中に木材が！」
「こんなの平気だ」
「でも……」

　私は砂浜と海斗さんに挟まれた状態のままで怪我はないけど、海斗さんが心配だよ。
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