俺の妹が可愛すぎて。


麻依はこんな風に人前でもお構いなしにベッタリと俺にくっつく。


俺としてはかなり恥ずかしいのだが、麻依にくっつかれることは嫌じゃないし、むしろ嬉しい……だから何にも言えない。


「……今日、お兄さんとお姉さんは?お祭り行ってるんでしょ?」


駅からしばらく歩き出して麻依が俺を見上げて言う。


「あぁ…優花は彼氏と行くって言ってた。実里さんの浴衣着てたわ」

「そうなんだぁ。お姉さんの浴衣姿可愛いだろうなぁ」


あまり家族のことを他人に話したくない俺なのに、麻依には家族の話をよくしていた。

興味深々に無理やり訊かれたっていうのもあるけど、なんとなく…麻依には話しやすくて、俺のことを知ってほしいっていうのもあった。

本人には絶対そんなこと言えねぇけど。



「……お兄さんは?……例の彼女と?」

「……多分」

「……風馬、まだ怒ってるの?いいじゃない、夏休みなんだし、彼女くらい作らなきゃ」

「怒るっつーか、なんていうかさ……彼女って無理矢理作るもんじゃねぇだろ?」

「………そりゃそうだけど…」





『例の彼女』



ユキのことを訊いたのは、合宿から帰ってきてからのことだった。


ユキが話があるって言って、ユキの部屋に呼ばれた。


『……なんだよー、もう疲れてんのにー』


なんとなく暗いユキとは対照的に、少し明るく言ったのに、ユキはなんだか真剣な表情。

多分、優花のことで落ち込んでんのかと思ったのに、ユキがカミングアウトしたその言葉に俺は眉間にシワを寄せた。





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