俺の妹が可愛すぎて。


「……多分、自分の母親が辛い状況だったのを見ていたから、腹が立ったんだと思う。

復讐したかったのよ。

……だから…あたしに近づいてきたの。


付き合ってって言われて、あたしは何とも思ってなかったから、断った。

だって、一つ上の人だし、それまで話したこともなかったんだもん。


それで、断った時に言われたの。


『お前の父親は、俺の母親を苦しめたくせに。……覚えてろよ。』って。」


そう言った最後の方の声は、少し震えていた。


「それから何度か、今日みたいに『俺と付き合え』って強引に言ってくるの。

別にそれ以外何をされるわけじゃないから、誰にも言わなかった。実里さんと付き合って幸せそうなパパに心配もかけたくなかったし…。

でも、今日はあたしが転校するってこと、どっかから訊いたみたいで、しつこくて…

でも……あなたが助けてくれたから、よかった。」


そう言って優花は優しく微笑んだけど、俺はそれにうまく応えられなかった。


「……無理すんなよ。」

「え…?」

「……もう、そうやって無理すんなよ。なんかあったら、俺に言って?…今日だって、勝手に言っちゃったけど、俺を彼氏だって言って利用していいから。そしたら、いい加減アイツだって黙るだろうし…優花があんな奴のことで、苦しむ必要ねぇから、絶対。」

「……うん。……ありがと。…優しいんだね。」


優花は安心したような笑みを浮かべたから、俺も自然と笑って応えた。



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