あなたが作るおいしいごはん【完】

謝罪を呟いた私に

『…良く言えました。』

彼は優しく微笑みながら

頬から指を離すと

グイッと後頭部を引き寄せられ

私は彼の腕の中にいた。


『…萌絵。』


頭を撫でられながら

頭上から降り注ぐ私を呼ぶ彼の声に

…ドクン…ドクン…ドクン。

更に胸の高鳴りが加速した。


彼にこんな事されるのは滅多にない。

嬉しい…でも、戸惑ってしまう。


そんな中で彼が口を開いた。

『……謝らなくていい。
話はだいだい田宮さんの言う通りだ。
やましい事は一切ないけど
不愉快に感じたなら
今後はレシピを渡しても
現物を渡すような事はもうしない。』

「……。」

『…それに、あのスタジオには
女性は一人も入れていないし
戸波さんに個人的に教えたりとかは
一切していないし
萌絵がいるのだから、浮気はない。

それに…こうして
この事務所の中まで
入らせている女性は萌絵だけだから。

…だから
俺を信用しては貰えないだろうか?』


抱き締められていて

表情は見えないけど

確かに田宮さんの説明通り

彼もまた

嘘を言ってるようには思えなかった。








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