あなたが作るおいしいごはん【完】
しかし、彼は決して
スンナリと料理研究家の道へ進む事を
許されていたと言う訳ではなかった。
それは彼の生まれた環境にあった。
彼の父親の秀和(ひでかず)は
ビル、マンション等の
不動産業を経営する会社の社長で
彼は御曹司になり
秀和社長は必然的に
彼を後継者にしたいと願っていた。
ところが、料理が大好きで
料理研究家への道を志していた彼は
中学3年生の志望校、進路決定の際に
自分の希望を伝えたうえで
会社を継ぐ意志がない事を
秀和社長にハッキリと伝えた。
後継を期待していた秀和社長には
寝耳に水の話をされ
怒りは当然収まらず
料理研究家への道に進みたい彼を
当然反対していた。
しかし
彼も夢を諦めたくない意志が強く
話し合いはいつも平行線ばかりで
どちらも歩み寄る事なく
顔を合わせば社内外お構いなく
口論が絶えなかったとの事だった。