あなたが作るおいしいごはん【完】

『……この馬鹿息子がっ!!』


自分の息子を怒鳴りつけている男性。

引っ越して以来、10数年振りに

久々に見る薮嶋恭平の父親は

紳士のようにかっこよかった

印象は残しつつも

昔よりは格段にやつれたような表情で

自分の息子の胸ぐらを掴みながら

声を震わせて泣いていた。


恐らく薮嶋恭平は揉み合った際に

父親から殴られたのだろう。

その口元は切れていて

微かに血が滲んでいた。


やがて


『…申し訳ない…。
ウチの息子が…申し訳ない。
萌絵さんを傷つけて…申し訳ない。』


殴られて意気消沈した自分の息子を

無理やり土下座させながら


『……本当に申し訳ない。』


薮嶋恭平の父親も泣きながら

床に頭を擦り付けるぐらい

土下座をして謝罪をした。


すると

『……謝れば済むと思うのか?
萌絵は犯されそうになっていたのに…。
怖い目に遭わされていたのに…。
“申し訳ない。”で済むと思うのか!!』

廊下に彼の怒りを含む声が響き渡り

皆が彼に視線を向けた。
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