あなたが作るおいしいごはん【完】

彼の涙と開かれた扉


『……あっ、浅倉さん!?
どうして…ここに?

…あっ、まさか…今の会話……。』

田宮さんはドアの向こう側で

私のバッグが落ちた音に気づき

ドアを開けた途端

私が立っていたのを見て

相当驚いた表情を浮かべた。

『……萌絵…さん。』

田宮さんの後ろでミレイさんも

一瞬目を見開いた後

『…聞かれて……たんですね?
あの…その…私…。
あなたの事を知っていたのに
ちゃんと挨拶も出来なくて…。』

そう言って口籠って俯いた。


…ああ、やっぱりそうなんだ。


そんなミレイさんの表情を見た途端

私の中で何もかもが終わった気がした。

目から涙がポタリポタリと流れ落ち

立っていられなくなって

その場にしゃがみ込むと

「……うっ……うっ…うっ。」

と、両手で顔を隠し

嗚咽を漏らしながら私は泣き出した。


『……あっ、浅倉さん!?
どうして泣いているんですか!?』

田宮さんが驚いた声で私を見下ろし

『…萌絵さん!?』

ミレイさんも驚いた声を出すと

私の近くに寄ってきた。




< 233 / 290 >

この作品をシェア

pagetop