あなたが作るおいしいごはん【完】

彼は一瞬考えた後

『…確かに、“女性入室禁止”だと
決めていたよ。
でも萌絵は特別だよ…。

開設した当時から
いつかこの場所に萌絵に入れて
こうして見せたいと思ってた。

萌絵の目で見て欲しい…。
俺と一緒に見て欲しい…。と

いつも思ってた。

だから婚約出来た時に
萌絵を入れようか迷ったけど
あの時の萌絵は俺を好きじゃなかったし
混乱して穏やかじゃなかったと思うから
ケジメとして
“想いが通じ合って
家族になる日にしよう”と思ってた。

田宮さんにも、速水達にも報告済だけど
これからも女性でここに入れるのは
萌絵と…俺達の子どもだけだよ。』

そう言って私に微笑んだ。

特別だと知って嬉しいけど

まだ何かわからない私は

「…で、でも…どうして私なの?
どうしてそこまでして
私には見て欲しいと思ったの?」

と、さらに彼に尋ねた。

すると彼は少し屈んで

両手で私の左手を取ると軽く持ち上げ


『………萌絵のおかげなんだよ。』


と、優しく私を見つめた。
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