あなたが作るおいしいごはん【完】

「…私のおかげ?
…………………。
あの…ごめんなさい…思い出せない。
私……何かしたかな?」

見に覚えがない私は

私のおかげだと言われても

全くわからなかった。


彼はそんな私を見てクスクス笑うと

『…いいよ。
覚えてなくて当然だよ。』

と、前置きした上で口を開いた。

『…でもね…俺が今
この料理研究家になろうと思ったのも
この職業に就く夢を志したのも
本当は萌絵がキッカケで
本当は萌絵のおかげなんだよ…。』

と、彼は私の左手を撫でながら

すこし真面目な表情になると

『…今から俺が話す事聞いてくれる?
ずっとこの話を俺は
萌絵にいつか話したいと思ってた。

話しても、俺はずっと萌絵に
『ありがとう。』と言いたかったし
ずっと前から萌絵を好きだった事も
これでやっと言えそうなんだ…。

勿論、しんどかったら
遠慮なく言ってくれたらいいし
今、お茶も入れるから
聞いて貰えるかな。
………話してもいいかな?』

そう言って

お願いするように私に尋ねた。

勿論、迷いなく私は頷くと

「…聞きます…聞かせて下さい。」

と、真っ直ぐに彼を見つめ返した。


『…ありがとう…お茶入れるよ…。」

彼はホッとしたような表情を浮かべた。




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