あなたが作るおいしいごはん【完】


私の唇に感じる

彼の柔らかい唇の感触。


でも……。


ーー『本当の愛が込められたキスが
出来るといいのにな……。』ーー


さっきの彼の言葉に

今まで熱く高鳴っていた私の胸に

ズキンと棘が刺さった途端に

サーーッと切ない感情が入り混じる。



本当に愛し合っている男女なら


キスは《チョコレート》みたいに

甘く蕩けるとか

《マシュマロ》みたいに

ふんわり、ふわふわで柔らかいとか

《ミント》や《レモン》みたいな

爽やかな味もするとか


…そんな風に言うのかもしれない。



本来ならキスは

嬉しくて堪らないはずの行為。



……でも今の私達は違う。




彼もわかってる。




…このキスに私への愛はないって事。



そして…この関係にも愛はない事も…。



でも…この想いに

……後戻りはもう出来ない。



彼に対して本気で心惹かれ始め

本気で好きになり始めていた私は

このキスを落とされた瞬間




……彼に深く堕ち始めるのを感じた。
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