あなたが作るおいしいごはん【完】

あのお見合いの時

あんなに反発していたはずなのに

そもそも昔の私は彼を

お世話になったお兄ちゃん的存在で

見ていたから

恋愛感情なんてなかったのに

私は確実に毎日毎日

彼…カズさん…押谷和亮に恋していた。


『2年後…焦らなくて…少しずつ…。』

なんて、彼は言ってたけど

私の唇に初めて彼から

触れるだけのキスを落とされたあの日に

もう私は彼に堕ち始めてしまった。


でも、あの日以来

彼は私の額や頬に

軽いキスを落とす事はあっても

唇には一切してくる事はなかった。


同棲生活を開始した時

寝室は別々にしているけど

それは今も変わっていない。

『一緒に寝よう』とも言われないから

私からも勿論誘えないから

一緒のベッドで眠った事はなく

朝はいつの間にか起きている人だから

当然、彼の寝顔すら見た事ない。


微笑みを浮かべながら

頭を撫でてはくれるけど

私を抱き締める事もせず

以前のようにあの繊細な指で

頬を撫でてくれたりもなくなり

手を出してくる…なんて事はなかった。











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