あなたが作るおいしいごはん【完】

ただ一つ…変化があるとしたら


『…萌絵のそう言うところはいいね。
俺は…好きだよ。』


と、話の流れの中で

彼の口から『好き』だと言う言葉が

出始めた事だった。


彼のあの優しい声で言われると

私は瞬間に心を鷲掴みされてしまい

胸は脈打つようにドキドキと高鳴り


“私の事を好きになってくれた。”


と、自惚れてしまいそうになる。


「…私も好きです。」


なんて言えたらどんなにいいか…。

愛のあるキスが出来たら

どれだけいいか…。


でも、ダメなんだ…。


…それは…彼の頭の中には

きっと今でも大半を占めると思う

私の父、靖雄への恩があるはずだから……。


わかっていても辛い。


彼の口から父の名前が出る度に

料理研究家に進む道を

後押ししたとされる父への恩の為に

私との政略結婚に

同意した彼の想いが頭をよぎるから。

彼がそう言ったワケじゃないけど

私にはわかる…そうわかるんだ…。











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