あなたが作るおいしいごはん【完】

『……カズ先生から
“俺の婚約者をレナさんのお店で
バイトさせて貰えないですか!?”
って頭を下げられた時は
正直僕も妻も驚いたけど

“萌絵は真面目で親孝行な良い子です。
最近、バイトしたいって言い出して…。
でも、今まであの子は
バイト経験がないから
他の店で働かせるのは心配なんです。
お義父さん(靖雄)のお店は
抵抗あって本人も避けたいみたいで。

だからレナさんのお店なら
絶対に安心だと思うから
彼女をバイト採用してやって下さい。
……お願いします!!”

と、ひっしそうに頼み込むから
妻も先生から信用されて
ありがたいからって
浅倉さんの採用を決めたけど

今は浅倉さんが来てくれて
本当に助かってると妻も言ってる。』

田宮さんは眼鏡の奥でニッコリと

微笑んだ後

『…あっ、夕飯どうぞ?
先生…用意されてましたよ?』

と、いつものように

私に夕飯を食べるように勧めてくれた。

「…すいません。頂いてきます。」

私は事務所の奥にある

こじんまりしたテーブルスペースへと

向かい、バッグとケーキの箱を置くと

近くにあった彼専用の冷蔵庫を開けた。


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