LOVEFATE~理由~

S総合病院に向かう車内は静かで、

誰も口を開かなかった




俊ちゃんが無事なのだと知っていても、

この目で元気な俊ちゃんの姿を見るまで安心出来ない



みんな、同じ気持ちなのだと思う



今も、不安に押し潰されそう





助手席に座る蘭子ちゃんが不安から俯いて泣いているのが、

真後ろの後部座席に座る私から見ていても分かる



そんな蘭子ちゃんの手を、

亮ちゃんが安心させるように握っている





私の横にはお母さんが座っていて、
その横に、俊ちゃんのおばさんが座っているけど



おばさんも、今も泣いているのが、
響く音で分かった




カーステレオからは、
ラジオのニュースが流れている




『――乗客乗員、全員無事に救助されました。

奇跡です』


< 679 / 728 >

この作品をシェア

pagetop