ただあなたに逢いたくて
「ただいまー。」
「おかえりー。ってまたあんたは!!どれだけ服を汚したら気が済むの!」
しかも帰るの遅い!とつぶやきながら母さんは台所に消えていった。
「あら?泉帰ってたの?」
呑気な声でソファーにくつろいでいる4歳差の姉貴。
「あぁ。」
俺も隣のソファーに座った。
「なぁ。姉ちゃん。」
「んー?なに?」
「俺、心の病かな?それとも心臓の病気かな?」
「急にどーしたのよ。」
「いや、大したことじゃないんだけど。笑顔を見て心臓がうるさくなるんだ。」
「え。誰の笑顔?」
「誰の?誰のって…」
咄嗟にあの女の子の笑った顔を思い出した。
「あらーん。なんでそんなに赤くなってのー?」
姉ちゃんがニヤニヤしてきた。
「別に!赤くなんかなってねーよ!」
「なによ!ムキになっちゃって。まー、あんたがはっきりしたいならクラスの女の子たちの笑った顔を見てみな。そしたらなんでかわかるから。」
「あぁ。」
「そーか。あんたももうそーゆう年なんだよね。」
「え?」
「いやー。なんでもー。」
なんだあいつ。
いつも変だけどいつもより変だ。
「ねーー!お母さん!泉もとうとうピンク色の青春が始まったよ!」
姉ちゃんはいつの間にか母さんの横にいた。
「あら!泉もそーゆう年なのねー。」
二人で俺の話に盛り上がっていた。