桜まち 


未だにスプーンでオムライスをブスブスついている櫂君を、少しでも元気付けたくなるのは親心に近いかも。
何かいい案はないものか。
少し考えてみたけれど、さっきの会議となんら変わらず、打開策が見つからないのでくだらない提案で笑いを誘うことにした。

「なんなら、ルームシェアする?」

私が冗談で言うと、目の前の櫂君はオムライスにスプーンをつき立てたまま目を見開いて固まってしまった。

何このリアクション。

いいですねぇ、ルームシェア。
毎日酒盛りじゃないですか。

てな感じに、冗談で言い返すくらいしなさいよ。
ちょっと笑いを取ろうと思っただけなのに、私とじゃあ、迷惑だってこと?
その態度、あからさまではないですか。

けど、部屋の空きがなくて残念がっている人をこれ以上落としても仕方がないので、ここは一つ私が大人にならなければ。

「櫂君? おーい。冗談だよぉー」

口元に右手をもっていき、山彦でも誘うように声をかけると、固まっていた櫂君の金縛りが解けた。

「あ、はい。うん。そうですよね。はは」

なんだか慌てたようにして、わざとらしい笑いを零している。
ついでに、ブスブスになったオムライスは山を崩し、見た目はなんとも無残になっていた。

ご臨終です。
チーン。

「そんなに私と一緒は、不満なのかい?」

少しだけ口を尖らせてわざと抗議をする私へ、櫂君は、とんでもないと声を大にする。

「いえいえ。そんな、とっても光栄すぎて驚いただけですっ」

櫂君は、うんうん。と何度も頷き、しまいにはケタケタと笑っている。

そのリアクション、どう受け取っていいものやら。

なんにしても、私とのルームシェアには数パーセントも賛同できないということだろうな。
いいけどさー、別にぃ。


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