桜まち 
初詣





  ―――― 初詣 ――――




櫂君とは、大きな神社のある最寄り駅で待ち合わせをしていた。

駅を出た時点で、その街は既に大きな賑わいを見せている。
恋人同士、友達同士、家族連れ。
たくさんの買い物袋は、セールに行ったのかな?

そういうことに無関心な私は、セールだからといって出かけることもなかった。
ごった返すセール会場でもみくちゃにされるよりも、おコタでみかんやビールを堪能しながらまったりしているほうがずっといい。

「お正月そうそう。みんなよく出かける気になるなぁ」

今日は自分もそのうちの一人だということを棚上げにして、人波を眺めていると後ろから弾むような声と共に肩を叩かれた。

「菜穂子さん」
「あ、櫂君」

「あけまして おめでとうございます。今年も宜しくお願いします」

櫂君は、丁寧に挨拶をしてぺこりとお辞儀をする。
私もそれに習って挨拶をした。

「あれ。櫂君、コート新しいよね?」
「あ、気づいてくれました」

私の言葉に、ホクホクとした顔を見せる。

「年末にセールに行ってきたんです」

ほう。
櫂君もセールへ行った一人なんだね。

着ている新しいコートは、ダッフルだけれどブラックトーンのチェックのせいか、全然子供っぽく見えない。
寧ろ、スマートな着こなしになっていて、履いているブルーのジーンズによくあっている。


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