桜が咲く頃~初戀~
『それで、二年も経った頃に綾香に子供が出来たと言われたんよ。俺には何にも考えられんなって何にも出来ん様な気がしてただ不安になった。子供が出来た?俺の?とか。何にも手につかん位に悩んだけど。決めたんよ大学辞めて責任取るって。綾香にも、お母にも誰にも…恥ずかしいって気持ちもあって言えんかった』


そこまで圭亮は話すと深いため息をついてまた考えながら話を続けた。


『仕事も、バイトしていた大学の近くのレストランで見習いから正式に採用してもらえて。働いていたんだけど。しばらくして綾香にバレてしまって…凄い怒られたし責められた』


圭亮はあの日に綾香が香奈との思い出の写真を圭亮に突きつけ香奈への気持ちを想い起こさせた事は話さないと思い話を更に続けた。溢れて話したい事は沢山あるけれど。今はそこまで話すのは香奈に負担になるかも知れなと躊躇したのだ。


『そして、部屋を出て行って帰って来なくなったんよ。あれから1度も会って無かった』

そう話すと圭亮はやっと一息ついて深い深呼吸を1度すると息を止めた。

その話の間の空気が2人の間を圧迫しているみたいで香菜は苦しかった。


『綾香は初めから。いや…ずっと子供の時から知っていたんよ。俺が香奈ちゃんを好きだって事』

そこまで言うと、圭亮は香奈の左側に腰掛けていた縁側からゆっくりと降りて振り向き香奈を見た。

少しもの憂いな柔らかで切なさを宿した圭亮の瞳が何故だか泣きたくなる思いで香奈は見詰めた。
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