桜が咲く頃~初戀~
『それで。綾香今、コッチに帰ってきてる。さっき会ってきた』

そう、圭亮は目を細めて少し眩しそうに目を細めた。香奈は部屋からの蛍光灯の明かりで少しオレンジ色になっている圭亮の姿を眺めまた、胸が狭くなって行く感じがした。



『子供、連れて来たん?』


香奈はそう圭亮に問いかけた自分が可哀想な人に思えて悲しくなった。


『うん。連れて来た。男の子やって綾香に似ていて気が強そうな顔をしとった』


そう言ってから圭亮は「あはは」と空を向いて笑った。


『その子な、俺の子供や無いんよ。名前は「敬涼」って』


そう言って圭亮は香奈の目の前に右手の人差し指を出して文字を書いてから唇を右上に斜めに上げて苦笑いをした。


『俺とおる時から別に彼氏いたんよ。俺の気持ちを知っている綾香を責めることなんか出来んかった』


そう言って圭亮は「ふぅ」と一息ついた。


『俺の子供やないと分かってホットしたん。そう思う事は後ろめたかったけど。知った事でやっと子供の頃からの気持ちを伝えたいと思った。そうせんと俺はまた周りの誰かを傷つけるし、俺の気持ちも傷つけるから。香奈ちゃん俺な』


そう言うと圭亮は少し後退りして立ち止まり香奈を真剣な顔で見て


『俺は香奈ちゃんがずっと好きでした今も全くその気持ちは変わらん』


と言った。


香奈は「うん」と1度頷くだけで下を向いて黙ったまま背の高い圭亮を見上げる勇気が出なかった。


圭亮はその先の言葉が見つからない

『香奈ちゃん。俺は今、話した事がいっぱいいっぱいやし。あの…もう、夜も遅くなったし寒いから香奈ちゃんは部屋に入り。俺帰るから。お休み』


と、少しばつ悪そうに言うと香奈の下を向いて蹲るかの様な頭にそっと手を乗せ。すぐに離すと圭亮は庭の出口の方へ振り向きおばぁちゃんの庭の砂利を蹴りながら1度も振り向かず暗い道に帰って行った。


圭亮のその後ろ姿が暗闇に見えなくなっても見続けながら



『なんや。1人だけ告白してから…』


そう香菜は呟いて幼い頃の圭亮を思い出されて照れ笑いをした。







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