桜が咲く頃~初戀~
香奈は、そんなおばあちゃんの声を聞いて何だか泣きそうになった。

大阪からココまで連れて来てくれてからおばあちゃんが何時も側にいて色んな事をしてくれる。

どんな些細な事も決して笑ったりせずしっかりと受け止めてくれているから香奈は寂しくても平気だった。

おばあちゃんが居るから。

『バアちゃん。ありがとう』

香奈はお風呂の中のおばあちゃんに向かってそう言った。そんな小さな声が静か過ぎる田舎の夜に微かに響いて聞こえたおばあちゃんは湯船の中で何度も何度も顔を洗いながら声を潜めて泣いた。

『香奈はいい子やけ頑張れ頑張れ』

そう言っておばあちゃんはまた泣いた。


香奈は家の中に入って火鉢の前に座ると白い餅が硬く焼けているのを火箸で炬燵の上の皿に除けると何をする訳でも無く色んな事を考えた。
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