桜が咲く頃~初戀~
全て買い物を済ませた紀子は満足したかのように

『お母さん。香奈の服をコーディネートするのが夢やったんよ』

とニコニコ笑った。その紀子の顔は幼い頃の香奈の大好きなお母さんの顔だった。

彩未も沢山可愛い服を買って貰って来たらしく。自分で持つと言って沢山の袋を少し重たそうに両手に下げていたけれど嬉しそうにしていた。

『あっ、もう11時になるわ!早くおばぁちゃん所に行かんと』

そう紀子の言葉に3人はおばぁちゃんの待っている市民病院に急いだ。

デパートから病院迄は車で役5分程だった

おばぁちゃんの病室の扉を開くと既におばぁちゃんは病院に来た時と同じ藤色のセーターにクリーム色の長いスカートを履いてちんまりとベットの上に腰掛け左耳にイヤフォンを入れてテレビを観ていた。


荷物もキチンとまとめられていて今すぐにでも帰れそうな雰囲気になっている。


『あら?お母さん。もう着替えしたの?先生は14時って言ってたよ』

紀子がそう言うと、おばぁちゃんはニンマリと笑って


『ちんたらしとったら。帰れん気ぃしてなぁ…着替えとったらさっと帰れるしな』

と言って『あはは』と笑いながら耳からイヤフォンを外して長いコードをクルクルと巻いて自分のバッグの前ポケットに入れた

香奈はそれがおばぁちゃんらしいと思って可笑しくなって一緒に笑った。


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