桜が咲く頃~初戀~
予定よりも早く12時迄には外来の診察室に入って説明を聞く事が出来た。

『伊藤さんの検査結果ですがね。胃潰瘍やね。癌の検査もしとるけど』

と言いながら。医者はパソコン画面に映し出されたMRI画像を右手のマウスでスクロールさせて。画面を行ったり来たりさせながら


『まぁ、得に影も見当たらんし。来週の通院日にはちゃんとした結果は出るから。何かあればコチラから電話もしますしね。最近、何か生活環境変わったとか?ストレス性のもんやし。ストレスかからん様な生活環境を整えてな、ゆっくり過ごしてください来週通院日からはゆっくり様子見で』



そう言って優しくおばぁちゃんに話しかけた後紀子にも「大丈夫ですよ」とニッコリと微笑んだ。


おばぁちゃんは香奈と暮らし始めてから呑気に普段通りに過ごしていたと思っていたけれど。やはりおばぁちゃんの胸は何時もハラハラしていたのに違いないと不安になり香奈は思って泣きそうになった。


そんな香奈の少ない顔を見て何かを悟ったおばぁちゃんは紀子の車の後部座席に香奈と座ると香奈の肩を優しく抱き寄せて摩ってくれていた。


香奈は大阪からコチラに来る時に乗ったトラックでもおばぁちゃんがこうしてくれた事を思い出してキュンと胸が縮んだ気持ちがした。

『なぁんもな心配無いから不安に思わんでえい』

そうおばぁちゃんは何時もと同じ優しい声でそう言った。






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