桜が咲く頃~初戀~
朝、香奈が目を覚ますと、とっくにおばぁちゃんは起きていて土間に立って何時もの様に朝食を作っていた。

香奈は慌てて飛び起きると緑色のジャージに着替えて

『おばぁちゃん。私がするし休んで』

と言ったが、おばぁちゃんはニコニコしながら左手で香奈の動きを遮ると

『何ぁんもせんかったらバァはボケるしな』

と言ってハムエッグを焼いた。本当におばぁちゃんはキチンとしていて強くて優しいと香奈は思うと何だか泣きそうになった



『今日はな。雪が降るとニュースで言っとったで。今年最後の雪になるかも知れんなぁ。なぁ。香奈、あの桜の樹あるじゃろ?あれはな「河津桜」って言う桜なんよ。オオシマザクラとカンヒザクラの自然に交じわった桜でな。オオシマザクラは薄い白に近いピンクでな。カンヒザクラは濃いピンクの花を咲かせるんや。この2つが交わった河津桜はカンヒザクラよりは薄いが可愛いピンクに咲くんよ。日本にしかない桜でな。河津桜が咲き出すのは2月の初め頃からで一月かけてゆっくりゆっくり満開になるんよ』


そう言っておばぁちゃんはお味噌汁の味噌を溶きながら更に話しをした。

『覚えとるか?「桜子」の話は?15歳で天に召される時に桜の花弁を握っとったて』

そう言うと振り向き後ろに居た香奈をじっと見詰めた。

『うん。覚えてる』

香奈がおばぁちゃんの話しを聞く為にテーブルの椅子に腰掛けるのを見届けるるとおばぁちゃんは背中に両手を回して腰で組んでからニコニコしながら『うんうん』と頷くと更に話し始めた。

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