桜が咲く頃~初戀~
『なあ、紀子。香奈は俺を受け入れてくれるかな?』

そう心配そうな顔で良幸は紀子に上目遣いで聞いた


『良幸さん。香奈は性格も顔もあなたにソックリだから分かるでしょ?素直になれない所とか心配性な所とか。自分で、考え過ぎて空回りする所とか』

そう紀子は優しく良幸に話し出した


『香奈が恋を分かって幸せだと自分で気が付いたら。あなたの事も私の事もきっと受け入れてくれるから。今はまだ焦らずそっとしておきましょう。それに。香奈はお母さんの所で心の勉強させて貰ってるみたいで。本当に良かったと思ってる。私達の仕事よりお母さんの方が心のお医者様だと思いました』

そう紀子は涙目になりながらでも、明るい口調で話しを続けた


『自分達の子供の気持ちを分かってケアするって本当に難しい事が分かったでしょ?分かって上げているつもりになってる知識では心を分かるって難しいんよ。話を聞いて上げてるって思った時点で、私達の仕事の役割のエゴが出てるんやね。そう思った。かと言って私達にも気持ちがあるしそれはどうしょうも無いんやけどね。穴があっておかしくないと思いました〜』


そう話す紀子はあの頃の不安気な母親では無く少し強く見えて良幸は泣きだした。


『かと、言って。香奈ももう大人だし。私達の言葉より自分の気持ちの言葉しか受け入れにくいとおもうねん。だから難しいんやね。今はお母さんや周りの他人様の方が香奈にはいいと思ってると私は感じた。私達ももう1度勉強し直さないとね』

そう言いながら紀子は良幸の泣く顔をティッシュで拭いて笑っていた。

『なんで笑うんや』良幸が泣きながら言うと紀子は益々笑って『大丈夫大丈夫。ごめんごめん』と言った

< 152 / 222 >

この作品をシェア

pagetop