桜が咲く頃~初戀~
『いやな。診療所の近くは嫌だろうか?とは思ったけどな。今の家に香奈を置いてはおけないとお思ってな。1人の部屋で孤立をまたするんや無いかと思ったら心配でなぁ。遠くに行かれて暮らされるのも俺は嫌だし。香奈はあっちでどんな感じなん?』

そう紀子に聞いてくる良幸に紀子は

『そうね。大分話もしてくれる様になってるし、それに彩未にも優しくて。それにね。覚えてる?川嶋さん所の圭亮君。あの子といい感じなんよね。ドキドキしてしまうわぁ』

そうキラキラと目を潤ませながら嬉しそうに話す紀子を見て良幸は少し顔を曇らせ眉間に皺を寄せると


『まだ、早い』

と呟いた。


その呟きに紀子はベッドの傍に丸椅子を持って行きゆっくり座ると


『あなたと出逢ったのが今の香奈と同じ歳で23歳よ。それに香奈はまだ恋を知らない。遅すぎるでしょーそれに25歳で私は香奈を産んだから。あなたに言わせたら早すぎたって事?あはは』

と悪戯に良幸に笑って見せた。



『そうかも知れへんけどな』

と言いながら良幸は益々苦虫を潰した顔になった

『あの、桜の樹で2人再会したんやって。ロマンチックやない。今は2人はそんな風にはなってないけど。私は2人の一緒にいる雰囲気がいいなぁと思うんよね〜上手くいきますように』

と紀子は両手を合わせて目をつむった。そんな紀子の様子を見ていた良幸は苦笑いをしながら顔の皺を緩めた

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