桜が咲く頃~初戀~
あの日の夜に香奈に自分の気持ちを伝えた圭亮は少し気まずい気持ちもあるのはあったが。

おばぁちゃんの何が言いたいか手に取る様に分かる電話での言葉に胸がキュンと震えて全身にそれが巡り圭亮は少し震えた。


それと同時に圭亮は自分の立場を考え無ければならなくなって居たのもあり、香奈に今会いに行っても良いのか躊躇われた。


昨夜の事である。伊藤のおばぁちゃんの退院祝いから帰宅してから川嶋家は久しぶりの家族水入らずの晩酌をする事になった。

『やっぱ、母さんの作る松前漬けは美味しいな』

圭亮は松前漬けを口に入れてから熱燗を啜ると幸せそうにそう言って百合子をニコニコさせていた。

『そうでしょ〜、烏賊の一夜干しも今焼けてるから』


とコンロのグリルの窓から百合子は菜箸を右手に持ちながら中を覗きこんだ。


百合子の母親の郷が北海道なので百合子が作る松前漬けは本当に美味しかった。

数の子、スルメイカ、昆布、金時人参を細く千切りにして醤油、味醂、日本酒で漬け込む。

熱々の炊きたてご飯にも本当に良く合って美味しいのだ。

百合子が程よく焼けて丸まってしまった烏賊の一夜干しと、一味唐辛子、醤油、マヨネーズと小皿3枚を盆の上に乗せて持って来た。








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