桜が咲く頃~初戀~
その時、鉄郎は右手に持っていた熱燗の入ったビールグラスをテーブルに置いて


『なぁ。圭。大学どうするんや?』


と圭亮に問いかけた。


『いや、もう2年前に辞めてるって言ってなかったけ?』


焼けたばかりの烏賊の一夜干しのゲソを圭亮は摘むと「あっつ」と言いながら烏賊の体から離して2本纏めて引き裂いてから一味マヨネーズに付けて口にほりこんだ


『それがな。あの時学校から電話来とってな。お前が退学届け出したってな。理由が曖昧でよぅ分からんって先生言いよって。こっちもよう分からんし。圭には何やのっぴきならない事情もあるんやろか?思って母さんと聞けんしなって話してな。悪い思ったけど休学扱いにしてもろとるで。もう戻らんならこんまま辞めてええし。未練あるならやけど。復学した方がえい』

そう鉄郎は言うと酒を呑みながら上目遣いに圭亮の気持ちを伺うかのように見ながら「戻った方がえい。うんうん」と何度も頷きながら烏賊の一夜干しのゲソを1本引きちぎると醤油マヨネーズにたっぷり浸して付けてから口に運ぶととても美味そうに目を細めて咀嚼した。

< 163 / 222 >

この作品をシェア

pagetop