桜が咲く頃～初戀～

2年後

桜が咲く頃

圭亮は朝早くに汽車を降り後15分程で来るバスを待っていた。このバスを逃すと次は2時間はバスが来ない。

圭亮はスマホをグレーのダウンジャケットの右ポケットから取り出して香奈にメッセージを送ろうとしたけれどふと思いやめておいた。


バスはアスファルトに大きなタイヤを鳴らして圭亮のいるバス停に入って来た。圭亮はバスの後部搭乗口に右足からステップを踏んで乗り込んだ


『おぉ。圭亮。久しぶりじゃね。お帰り』

バスの運転手がバックミラー越しに白い手袋をはめた左手を上げた。

『あぁ。大樹さんお久しぶりです』


そう言って圭亮は運転席に近い1番前の1人乗りのシートに斜めに長い足をほりだして腰掛けた。

『今回は何しに帰ってきたんね？』


大樹はそう言ってニヤリと意地悪そうに笑った


『え？大樹さん知ってるやないですかぁ？バァちゃんに聞いたんですよね？あれ？』


そう圭亮が不思議そうに大樹に聞くと大樹は

『そっかぁ。圭亮ももうそんな歳になっあんやな？』

と感慨深い顔でバスを発車させた。