桜が咲く頃~初戀~
香奈はそんな良幸の姿を見て何も言えず、頷く事も出来ずに黙って目を逸らすしか無かった。

その後しばらくその辺を車椅子で押して歩いたが2人を繋ぐ話しも見つからずにおばあちゃんの家へと引き返した。

家について2人は家に入るとチーズケーキがあり温かいココアを紀子が入れてくれたので香奈と良幸は向かい合って静かに食べた。

さっき迄の気まずさは今は別の想いが気まずくさせているのは分かっているがどうしても打ち解けられる迄にはならないでいる、そんか空気を知った紀子は小さな吐息をつくと優しい顔で笑って2人を見た。

夕方近くになり夕食めた取らずに良幸と紀子と彩未は大阪へと帰って行った。

彩未はやっと着られたピンクの花柄のワンピースが余程嬉しかったのか?何度も香奈の前でクルクル回って

『なぁ。可愛い?なぁ、似合ってる?』


と聞いては賑やかにしていた。

その彩未が居なくなったおばあちゃんの家はとても静かで香奈は凄く寂しくなった。

約、1週間一緒に過ごした小さな妹はずっと一緒に居たような気持ちになっていたのにと思うと大阪に暮らしていた時に彩未を虐めていた事が悔やまれた。そんな事を考えていると


『香奈ぁ。風呂沸いたから先に入らんかね?』

と五右衛門風呂の炊き釜小屋からおばあちゃんが何時もと変わらない可愛いシワシワな笑顔で顔を出して香奈を呼んだ。

『はぁい。今、入る』

と香奈は言うとお風呂の煙突から出る白い煙と夕焼けに藤色に染まり出した広い空を見上げた。

田舎のおばあちゃんの家の庭には薪が焼ける匂いと夕飯のおばあちゃんの甘口カレーの匂いがした。


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