桜が咲く頃~初戀~
終章
今日は3月9日河津桜の樹は寒い寒い季節の冷たい風に吹かれて蕾を付けゆっくりゆっくりと1ヶ月もかかって咲く。

それは『1番好きな人とは絶対に結ばれない』と言われているジンクスみたいに焦れったくて切なくて。

人も桜もゆっくりゆっくりと心を育て無いと満開には咲かないと圭亮は思った。

香奈を好きだと思う気持ちを知った幼い恋心も本当にゆっくりゆっくりで諦めたり悩んだり自分の気持ちを押し殺したりして来た今迄が今は嘘みたいに静かな波が押し寄せては引いて行く。


何時も1人の殻に閉じこもる香奈に恋をしていた事が何かは分からないけれど。


愛しい愛しいと心が何時も言っていたのだ。

『戀』とは自分の気持ちが誰かを『愛しい』と思った時に始まるのかも知れない。

圭亮と、香奈は『初戀』を実らせたのだ。

ただ、自分達だけでは決して実らせられない。周りの人や生まれや育ちで心を作りお互いに共鳴しないと絶対に実らない。


相手を思いやる気持ちは親からでも、周りの人間関係でも作る事がない事がわかる。


自分を色んな気持ちでちゃんと見つめる事が自分の心を育てるのだと思う。


赤ちゃんは生まれて来た時は両手をしっかりぐーに握っている。生まれて来て世間の空気に触れた瞬間に握っていた両手を広げてお腹の中で持っていた『幸せ』を1度手放すのだ。その手放した『幸せ』を生きる間に拾い集めて最後には『ありがとう』と感謝の言葉を残す。

全て拾い集めてしまう過程はそれぞれで、なかなか見つからず泣いて悔しい思いをしても必ず1度握っていた幸せは必ず全て拾えるのだ。

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