桜が咲く頃~初戀~
圭亮は何時も伊藤のおばぁちゃんの畑までよくついて行っていたからそこに絶好な隠れ場所がある事を知っていた。そこを目指し一生懸命鬼から逃げた。

しかし知ってる筈のおばぁちゃんの畑は見えて来ない。ふと前を見ると圭亮が見上げても追いつかない程の大きな樹が圭亮を見下ろしていた。


圭亮は何だか少し寂しく思った物の足下に盛り上がる大きな根を見て思った。

〈ここに隠れてたら見つからない〉


圭亮は根の凹みに体を小さくして入り込んだ。


圭亮は何だかワクワクしていた。鬼に見つからない様に息をころしてじっとしていた。

耳に聞こえるのは風が葉を揺らすカサカサした音と波が寄せては返すサササーっとした音。

何の鳥かは分からないけれど甲高いコーンとした声と優しく歌う様にピィーヨローと鳴く声に何時の間にかウトウトと静かに眠りに落ちて行った。

圭亮は昼間保育園のお昼寝の時間にふざけて寝ずお友達にチョッカイを出したりして先生を困らせていたのが今になって睡魔に襲われてしまったのだった


どれくらいの時間が過ぎたのか?ヒューヒューと風のなる音にざわめく葉と枝の重なり軋む音に寒さを感じて圭亮は目を覚ました。

辺りの空は橙色と藤色がグラデーションになって霞かけていた。
そんな肌寒さに圭亮は恐怖を覚え身震いをした。辺りは誰もいない。幼い圭亮は大きな声を張り上げて泣き出した。
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